音楽と珈琲の店 岬(千葉・鋸南町)
房総半島の東京湾に面する中ほど、観光名所として人気のある鋸山のふもとにある喫茶店。国道127号線をトンネルの直前で曲がって、海に向かって100mほど進んだところにある。すごく分かりにくい。国道沿いに小さく案内の看板が出ているが、直前のトンネルに集中しているドライバーはまず気付かない。ましてや反対方向から来たら絶対に見落とす。防風フェンスに隠れて脇道があることも分からない。僕もこの場所は数え切れないほど通っているが、そんなところに店があるとは全然知らなかった。存在を知ったのは、東京で時間潰しのために書店に入り、たまたま旅行雑誌を立ち読みしたことから。癒しの○○○という調子で紹介されていた。
トンネルの直前から国道をそれてダートの道らしからぬ道を進むと「あらら、こんなところに」という感じでその青い小屋はあった。崖の上に建っていて、眼下には磯が広がっている。釣り人が何組かいる。スキューバダイビングのエントリポイントにもなっているようで、プカプカ浮いている人もいる。東京湾・浦賀水道を行きかう船がたくさん見える。天気が良ければ対岸の横須賀がくっきり見えるに違いない。ロケーションは素晴らしい。

喫茶店というより漁師の物置小屋(失礼)といった感じで、ドアを開けるのにちょっと勇気がいる。狭い。6畳ほどの空間だがダルマストーブが場所を取っている。詰めれば10数人入れるかもしれないが、座ったら最後動けなくなるだろう。先客が5人いたが、片手で小さく前ならえのポーズでどうもスイマセンという感じで窮屈に腰掛ける。壁や天井には年季の入ったミュージシャンのポスターやらCD・カセットテープの類が所狭しと飾られている。なんだか学校のフォークソング部の部室という感じ。なぜか犬の写真も。
しばらくして顔を出した年配の女主人にブレンドを注文。ひとりでやっているようだ。

鋸山の湧水が自慢ということだ。なるほどコーヒーがおいしい。しかも僕好みの味で嬉しい。主人によると、30年前からやっていて増改築を繰り返して現在にいたっているという。場所柄、風の心配が尽きないようで、台風が来ると眠れないとか。またすぐ隣の建物では、親戚だという人がライブができるようにみずから改装工事をしていた。いつ完成するか分からないという。マイペースな人たち。優秀な店員だったという愛犬の話をする時、タバコをくわえた主人のちょっと寂しそうな表情が印象的だった。
お気に入りの店ができた。(ブレンド450円)

